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研究内容
1. スマートポリマーのデザインと合成
スマートポリマー(刺激応答性高分子)は、外部環境の変化(温度やpH、光、磁場、特定分子)を認識し、その性質を変化する高分子です。医療現場で活躍できる新しいスマートポリマーをデザイン/合成します。
体温を認識するスマートポリマー
2. 薬剤耐性菌に抗菌効果を発揮する高分子
抗生物質に対して耐性を持つ薬剤耐性菌の出現は、人類にとって脅威に成り得ます。実際WHOが列挙した耐性菌のひとつであるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、米国においてHIVよりも多くの死者を出しています。高分子による抗菌は、長時間の殺菌性、限定的な副作用、化学的安定性の高さ、不揮発性、皮膚から透過しない、等の優位性から注目されています。特にカチオン性の高分子は殺菌性を示すことが多く、耐性菌の出現が認められないものも報告されています。我々はこれまでに、カチオン性を有する [2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド (METAC)を含有する高分子を合成し、MRSAを始め様々な細菌に対し抗菌性を示すことを明らかにしました。
抗菌性フィルムのプロトタイプ
3. 身近な高分子をスーパーなセンサーに!
ポリビニルアルコール(PVA)は、世界で年間500万トン生産される高分子であり、包装フィルムや化粧品など身の回りの様々な場面で利用されています。応用分野をさらに拡張する為、PVAの性質を制御する機能化が注目されています。しかしながら、PVAはその構造上機能化が難しく、多段階の有機反応や紫外線処理などが必要であり、高コストになってしまいます。これを解決する為、ジオール基と可逆的に結合可能なベンゾオキサボロール基含有高分子に着目しました。ベンゾオキサボロール基を含有する高分子をPVAに混合するだけで、機能化を行うことができます。操作が簡便で、危険な溶媒や特殊な装置を必要とせず、既存の生産ラインと同等のコストにて機能性PVAを製造することが可能です。我々は、PVAフィルムに温度応答性やpH応答性を付与することに成功しました。フィルム形成は、ベンゾオキサボロール基とPVAのジオール基の可逆的な共有結合に起因します。本技術を拡張することで、PVAに光や磁場、音、特定分子などに応答するPVAフィルムを調製することが可能です。本材料は、様々なセンサーとしての応用が可能であり、IoT社会を支える基盤技術となりえます。また生体適合性が高いことから、医療分野への応用が期待されます。
4. ベンゾオキサボロール基を利用したドラッグデリバリーシステム(DDS)DDSの開発
これまでに、ベンゾオキサボロール基のジオール基との可逆的な共有結合に着目し、ベンゾオキサボロール基含有高分子と糖(ジオール基)含有高分子を混合することで、世界で初めてベンゾオキサボロール基を介した機能性糖ハイドロゲルを調製することに成功しました。調製したハイドロゲルは、温度やpH、糖の濃度により形成と崩壊を制御することができます。この性質を利用して、ベンゾオキサボロール基を含有する高分子を最適な条件で混合することで、ナノ粒子やナノゲル、ナノファイバーなど自己組織化に伴うナノ構造制御を実現しました。調製したナノマテリアルを診断や治療を目指したDDSへ応用します。
5. 目に見えない高分子の動きを解明する
温度応答性高分子は、その物理化学的な性質を温度により変化させることができます。その構造は基本的には水和/脱水和の2種類です。我々はこれまでに、より複雑な構造変化を高分子にプログラムする為、2段階の温度応答性ブロック共重合体を合成してきました。各セグメントの状態により、2段階の温度応答性ブロック共重合体は水和-水和(溶解)、両親媒性(ナノ粒子)、脱水和-脱水和(凝集/沈殿)の3パターンを表現することができます。これまで複数の温度応答性セグメントを有するブロック共重合体を合成することは、材料および重合の面から難しく、3種類のセグメントが報告されている最大のものでした。これを解決する為、各セグメントのモノマー組成を制御し繋げることで、6種類の温度応答性セグメントを持つブロック共重合体を合成することに成功しました。解析から、ブロック共重合体は温度に応じて段階的に構造を変化させていることが分かりました。本材料の段階的な構造変化は、センサーやタンパク質ホールディング/変性のモデル研究などバイオミメティック材料としての応用が期待されます。
6種類の温度応答性セグメントを持つブロック共重合体
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